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NTT、1Gbpsを超える無線データ通信に成功

日本電信電話(NTT)は、マルチユーザMIMO(MU-MIMO)を用いた無線伝送装置により毎秒1ギガビット(Gbit/s)を超えるデータをリアルタイムに信号処理して伝送することに成功したと発表した。

最新の無線LAN(IEEE 802.11.n)では、シングルユーザMIMOが採用されているが、小型の携帯端末などアンテナ数の少ない端末とアンテナ数の多い高機能な通信が可能な端末が混在した状態で通信をする場合、親機は受信側の端末のアンテナ数に合わせて伝送速度を決め、それぞれの端末と1端末ずつ通信を行うため、無線LANの親機の能力を十分に活用できず、システムスループットが低下してしまうという課題がある。

MU-MIMOでは、複数の端末宛てのデータを、ビームフォーミング技術により電波の指向性を制御し、同一時刻に同一チャネル上で互いに干渉することなく送信し、高い周波数利用効率を実現する。
親機送信側のビームフォーミング制御により、各端末の受信機に他端末宛の無線信号が漏れ込まず、受信側での信号分離処理が不要であることが特徴となっている。

これまでは、多くの信号処理を高精度にリアルタイムでビームフォーミング制御することが困難だったが、NTTの未来ねっと研究所では、ビームフォーミング制御の方法としてゼロフォーシング型アルゴリズムを採用し本アルゴリズムの動作を同一処理の繰り返しにより行う逐次更新型演算技術を考案することで、ビームフォーミング制御を効率的に行うことが可能になり、FPGAによる実装を可能とした。

また、ビームフォーミング制御を行うために必要となる端末の通信状態の情報を端末から親機へ送る際、基準値と端末の通信状態の差分情報のみを送る情報圧縮技術を考案することで、オーバヘッド時間の短縮も実現し、最大6台の端末をそれぞれのアンテナ数に応じた最適な状態で同時に通信させることができ、合計で最大伝送速度1.62 Gbit/sのリアルタイム無線伝送を実現したもの。

NTTの未来ねっと研究所では、2008年から1 Gbit/s以上のシステムスループットを目標にIEEE 802.11acの標準化活動(2012年12月完了予定)に参加しており、標準化の検討項目のひとつである、マンションなど無線LAN親機が高密度に設置される環境で必要とされる干渉制御技術などの研究開発を進めていくとしている。

<コメント>
無線LANでは、すでに300Mbpsという規格上の通信速度を実現しているだけに、1Gbpsとなっても驚くような高速化という印象は無いが、リリースによるとシステムスループットの改善も検討されているとのことで、実効速度はかなりの高速化が期待できるのかもしれない。標準化が2012年末ということは製品化は2013年以降、端末などに内蔵されていくのはさらに後になるだろう。

関連リンク:NTTの発表リリース

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