「EMD.GR.JP」の企業インタビュー第5回はLiquid Audio,Inc.。
 先日、リキッドオーディオジャパンとの契約解除の発表をし、今後の国内でのビジネス展開が気になるところ。
 今回はLiquid Audio,Inc. マーケティング担当Kevin Walker氏に話を伺った。
 なお、文中ではLiquid AudioとあるのはLiquid Audio,Inc.を指しており、リキッドオーディオジャパンとは区別して表記している。あらかじめご承知の上、読んでいただきたい。
 
−まず先日、リキッドオーディオジャパンとの契約解除の発表をされましたが、今後、日本でLiquid Audioとしてのビジネスをやめるというわけではないのでしょうか
 
Kevin Walker氏:  現在はLiquid Audio取締役会の正式決定を待っている段階です。
 計画としてはLiquid Audioの日本支社を設立します。社名やオフィスの場所などはまだ決まっていませんが、ビジネスはLiquid Audioとして続けていく予定です
 
−分かりました。日本でのお話しは後ほど改めて伺うとして、日本で続けられるというLiquid Audioのビジネスについてご説明いただけますか
 
Kevin Walker氏:  はい。Liquid Audioが提供している製品は大きく分けて4つあります。 Liquid Storeという音楽配信インフラの提供、RIFFSという音楽カタログの提供、プレーヤーソフトの提供、そしてPD(編集注:携帯プレーヤー)向けAPIの提供です
 
−それぞれについてご説明いただけますか
 
Kevin Walker氏:  まず、Liquid Storeは欧米で提供している音楽配信ソリューションです。 日本ではリキッドオーディオジャパンがローカライズしてLMNJ(Liquid Music Network Japan)という名前で展開していました。 Webページの表示、楽曲の試聴、配信、決済まで含めたターンキーE-Commerceソリューションです。これから音楽配信を行いたいという事業者に提供します
 
−e-tailer向けのサービスですね
 
Kevin Walker氏:  そうです。
 e-tailerの中でも既に自らWebページを持ち、決済システムも持っている事業者に対してはRIFFS(Retail Integration and Fulfillment System)を提供します。 これは主に小売業サイト向けの音楽配信システムです。具体的にはLiquid Audioの持っている楽曲の電子カタログを提供するものです。 カタログはXMLで書かれており、ここには楽曲情報と共にダウンロードサーバへのリンク情報なども入っていますので、小売サイトはこれを加工して自らのサイトのWebページに貼り付けるだけで配信サービスを始めることができます。
 Liquid Storeのように音楽配信専用のサイトと決済システムを持つのではなく、小売店が販売している本やCDなどと一緒に同じ決済システムで音楽配信サービスも展開できるようになります
 
−すると、決済システムを持っていない事業者にはLiquid Store、決済システムを持っている事業者にはRIFFS、と使い分けられるのですね
 
Kevin Walker氏: その通りです
 
−RIFFSを使った場合も実際のダウンロードはLiquidのサーバからになるのですか?
 
Kevin Walker氏:  ええ。ただ、Liquidの名前はどこにも出てきませんから、ユーザーがそれに気が付くことは無いでしょう。
 例えば、RIFFSはアメリカでは既に大手レコードショップのサイトで使われています。そのWebページの中に楽曲の情報が並んでいて、クリックしていくと次々にショッピングカートに入っていき、課金は一回で済みます。 課金が終わると、「ここをクリックするとダウンロードができますよ」というページが表示されます。そこをクリックすると、初めてLiquid Audioのサーバに接続されてダウンロードが始まります。 ただ、ユーザーはLiquid Audioのサーバに接続されているとは気が付きません。そのレコードショップサイトから買い物をしたというだけです
 
−e-tailer側からすると、特にサーバを増やす必要もなく、自分のショッピングサイトにRIFFSというカタログを埋め込むだけで良いわけですか
 
Kevin Walker氏:  はい。その作業も通常は2週間程度でインテグレーションできます。もちろん、複雑なシステムにすると長くなることはありますが、基本的にはとても簡単なものです
 
−RIFFSの場合、楽曲のセレクトはe-tailer側でできるのですか?
 
Kevin Walker氏:  RIFFSのカタログはXMLのデータベースになっていますから、ジャンル別やアーティスト別にセレクトが可能になっています
 
−すると、e-tailerによってはジャズだけやロックだけと言った店の特色を出すことが可能なのですね
 
Kevin Walker氏:  その通りです。そうしたセレクションをしないのであれば、検索システムなどを提供する必要が出てきます
 
−このRIFFSというのはリキッドオーディオジャパンではサービスをしていなかったものですか?
 
Kevin Walker氏:  そうです。今のところ提供できるのはアメリカのサーバに入っている楽曲リストだけですが、これも日本では今までサービスしていません。 今後は国内にもRIFFSサーバを置いて日本の楽曲もRIFFSでサービス提供できるようにしたいと考えています
 
−他にLiquid StoreとRIFFSの違いはありますか?
 
Kevin Walker氏:  特にありません。
 また、Liquid Storeの方も顧客に会わせたブランディングが可能です。Liquid Audioの名前はまったく出さないこともできます。 Liquid Audioはあくまでインフラを提供するだけですので、名前を出す必要はありません
 
−このビジネスの収益としてはASPとしてe-tailerからシステム使用料を得る形ですか?
 
Kevin Walker氏:  それもありますし、レーベルやアーティスト向けには、こうしたシステムへの楽曲の登録を実費の形で販売しています。 エンコードしてDRMを施す作業料金と、ストレージの場所代、1GB当たりいくらと言った形でレーベルなどコンテンツ側には提供しています。もちろん、販売されたら何%という手数料もあります
 
−コンテンツホルダーに対しては、若干の登録料を払うことでLiquid StoreやRIFFSを通して多くの販売ルートで楽曲を配信できますよ、ということですね
 
Kevin Walker氏:  そうですね。インターネットでもお客さんが多く立ち寄るのはレコードショップのサイトですし、実際のレコードショップでも棚に自分のCDを置いてもらうのは大変でしょう。 Liquid Audioはそうしたレコードショップとコンテンツホルダーの間に入る卸のような立場になるわけです
 
−では、プレーヤーソフトについてご説明お願いします
 
Kevin Walker氏:  プレーヤーソフトにはご存じの通りLiquid Playerというものがあります。昨日(編集注:2001年7月24日)、バージョン6の英語版がリリースされました。若干フォントの問題などがあり日本語版のリリースはもう少し後になりそうです
 
−一部でバージョン6はマルチランゲージ対応になっているという情報もありましたが
 
Kevin Walker氏:  基本的にはその通りです。ヨーロッパ系のEFIGSと呼ばれる英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語と日本語に対応しています。 本当に少しの表示の問題だけですので1ヶ月以内にはリリースできると思います。
 プレーヤーソフトには無償プレーヤーと有償プレーヤーがあります。これまで日本では無償プレーヤーしか提供してきませんでしたが、このバージョンからは有償のプレーヤーも提供します
 
−無償と有償ではどのような違いがあるのですか?
 
Kevin Walker氏:  無償の場合は機能制限があります。
 具体的には、バージョン6の場合、CDリッピング時のビットレートが最大78Kbpsになっています。 また、バージョン6からはCD-Rへの焼き込みの機能が付いたのですが、これも4倍速までの制限になっています
 
−これを有償でフルバージョンにアップグレードできるわけですね
 
Kevin Walker氏:  アメリカでは$19.95でフルバージョンになります。 フルバージョンではリッピングのビットレートは192Kbps、CD-Rへの焼き込みも理論的には制限無しになります。 日本では他にもコストのかかる部分がありますので、アップグレード料金は3000円弱くらいになりそうです。
 これがコンシューマー向けのビジネスですが、OEMのビジネスも展開します。プレーヤーソフトもLiquid Storeのようにカスタマイズが可能になっています
 
−それはスキンレベルですか?
 
Kevin Walker氏:  はい。ウィンドウが四角なのは変えられないのですが、その中の色やボタンやアイコンなどはデザインも配置も自由に設定できます。 ロゴを付けることもできます。また、ブラウザ機能も付きましたので、起動時に接続するサイトを指定することもできます。
 
−自分の好きな名前のプレーヤーを作って自分のサイトに接続させることができるようになるわけですね
 
Kevin Walker氏:  そうです。そこで楽曲データだけでなく他のものも販売できるようになります。
 実績としては、アメリカで大手メーカーのCD-Rドライブ2機種にバンドルしています。バージョンは5.4になりますが、それもカスタマイズされており、メーカーの名前とロゴが表示されています。 そのプレーヤーの音楽購入ボタンを押すとそのメーカーが展開している音楽配信サイトにつながるのですが、このサイトはLiquid Storeで運営されています。 また、GO SHOPPINGと言うボタンを押すと、そのメーカーの販売サイトに接続し、PCやCD-Rといったものが購入できる仕掛けになっています。
 OEM先としてはこのようなコンピュータメーカーやCD-Rメーカー、PDのメーカーなどです
 
−最後にPD向けのAPIいうことですが
 
Kevin Walker氏:  これはOEMビジネスに近いのですが、セキュアな楽曲データを再生できるためのAPIを携帯プレーヤーメーカーに提供しています。 SP3(Secure Portable Player Platform)と呼ばれているものです
 
−SP3対応のプレーヤーといえば三洋電機のものがあり、そのOEMがTDK、アイオーデータ、日立から販売されました。しかし、その後新しいメーカーを聞きません
 
Kevin Walker氏:  アメリカやヨーロッパも含めると他にもあるのですが、確かに現状ではプレーヤーの市場があまり伸びていないため、メーカーは慎重になっています
 
−これまでの4つの製品群は、圧縮方式こそAACとはいえ、DRMも含めその他はLiquid Audioの独自方式ですね。ただLiquid Audioのサイトを見るとMicrosoftのWMTでのサービスも行っているようですが
 
Kevin Walker氏:  はい。我々がホスティングしている18万曲のほとんどはWMAのコーデックに変換されており、WMTのDRMでも提供されています。 Liquid PlayerではWMAファイルの再生もできます。制限はされていますがATRAC3にも対応していますし、MP3ももちろん再生できます
 
−先ほどのLiquid StoreやRIFFSもWMTに対応しているのですか
 
Kevin Walker氏:  ええ、対応しています。e-tailerが希望するならLiquid StoreやRIFFSをWMTだけの配信サービスに使ってもらって構いません。 Liquid Audioとしては提供するサービスはマルチコーデック、マルチDRMという方針でいます
 
−独自方式だけを提供することからそうした方針になった理由というのは?
 
Kevin Walker氏:  音楽配信市場が当初言われていたほどに広がっていないという現状があります。その原因を考えてみると、今の音楽配信は難しすぎると言えます。
 何の曲をどのサイトへ行って、どうやって買えばいいのか、圧縮方式、DRMが違うと再生もできません。それぞれにプレーヤーソフトを揃える必要があります。 PDにしても圧縮方式の対応によって再生できない事がありますから、せっかく買ったのに使えないと言うことを避けるためにユーザーはそれを勉強しなくてはいけません。 CDを聞くためにそんな勉強は必要ないでしょう。買ってきたCDをCDプレーヤーに入れるだけです。
 やはりもう少し簡単に、欲しい楽曲を購入して聴くことのできる環境にすることが必要です。 現状はライセンスの問題もあり、すべての圧縮方式、すべてのDRMを揃えるには至っていませんが、我々はそうした環境を提供していきたいと考えています
 
−と言うことは、既にLiquid Audioとしては独自のDRMなどにはこだわらず、Liquid StoreやRIFFSといった配信システムのアドバンテージで勝負していくと言うことですか
 
Kevin Walker氏:  そうです。特にRIFFSは、楽曲カタログとしてLiquid Audioのサーバでない他社のダウンロードサーバの楽曲も登録できるようにしていく予定です。 我々は本当にインフラを提供するだけです。
 先日、サブスクリプションモデルを発表しましたが、これもRIFFSをベースに構築されるものです
 
−そのサブスクリプションモデルの発表では既存のインフラにビルトオンできるとありましたが、RIFFSの上で動くという意味なのですか
 
Kevin Walker氏:  はい、裏のエンジンがRIFFSになっています。その意味でもRIFFSというのは本当に配信をFulfillmentするシステムなのですね。 ですから、我々はe-tailerがどのようなビジネスモデルを希望されてもいいようにRIFFSを自由度の高いシステムとして拡張していきます
 
−発表ではサブスクリプションモデルはプレビューとなっていましたが、実際にリリースされるのはいつ頃ですか?
 
Kevin Walker氏:  今はまだレーベルやRIAA(全米レコード協会)などとの話を進めている最中です。月々いくらで何曲までダウンロードさせるかと言った金額や曲数にコンセンサスを作らなければなりません。
 また、追加料金でPDへの転送をできるようにするとか、月が変わってもプレイリストをリフレッシュするのではなく更新する形にするとか、正式なリリースまでにはそうしたオプションに関するアイディアのうちのいくつかもまとまるものと考えています
 
−若干戻るかもしれませんが、Liquid Audioの製品群としてLiquid Store、RIFFS、Liquid PlayerはマルチDRM、マルチコーデックという方針に沿っているように思われますが、SP3についてはどうなっているのでしょう?
 
Kevin Walker氏:  SP3では他の圧縮方式やDRMの楽曲ファイルをそのままPDに渡す仕組みになっています。 トランスコーディング(圧縮方式変換)と呼ばれる技術もサポートされているので、技術的には十分可能なのですが、ライセンスの問題で実現していません。 極端に言えば、Liquid AudioではWinAmpやRealplayerにPluginを提供していますので、プレーヤーソフトやプレーヤーはどこのものでも良いという部分もあります。
 ただ、SP3には面白い機能があり、コーデックがなにかという情報をPDに渡すことができます。ですから、メーカー側でライセンスを持っていれば、PDにそのコーデックの再生機能を搭載しておき、これは何々のコーデックという情報をPDに渡して再生することができます。 もっとも、なかなか市場が伸びないのでメーカーがそうした対応を採ることは難しくなっています
 
−Liquid AudioとしてSP3のライセンスに力を入れていないと言うことではないのですか
 
Kevin Walker氏:  いえ、方針を変えたと言った方がいいでしょう。
 Liquid Audioは今年の初めにチップコアの大手開発メーカーと提携しました。 このコアを採用している多くの半導体メーカーにはSP3がサブライセンスされる仕組みができています。ですから、Liquid Audio自身がプレーヤーメーカー1つ1つとライセンスする必要はなくなっているのです。
 既にチップのコアにAPIが入っているわけですから、セキュアなデータを扱う上でのインテグレーションやインプリメントは何も必要ありません。 メーカーはPDのディスプレイ上に何の情報を表示するかと言ったことだけ考えればいいのです
 
−あと必要なのはPCとのアプリケーションインターフェースくらいと言うことでしょうか
 
Kevin Walker氏:  そうですね。USBドライバとベンダーモジュールというデバイスの情報が入っているモジュールの作成は必要です。 そのためのAPIも我々で用意していますのでメーカーはそれを使って簡単に作成することができます
 
−メーカーにはセキュアなプレーヤーの方がノンセキュアなプレーヤーよりコストが高くなるので作らないという判断があると思いますが
 
Kevin Walker氏:  確かに各メーカーとLiquid Audioがライセンスを交わしていればコストは高くなります。ですから、上流のチップコアメーカーにライセンスすることで、コストを抑えようとしているのです。 ライセンス収入は一時的に減るかもしれませんが、コストが抑えられれば販売数量も大きくなるでしょうし、結果的に我々としてもプラスになります。 やはりどのプレーヤーを使っても気にせず音楽を再生できるようになるための仕組みが早く必要です
 
−そうしたユーザー環境として問題にしていることは他にもありますか?
 
Kevin Walker氏:  やはり通信環境でしょう。日本ではADSLが話題になっていますが、通常の回線ですとまだダウンロードに15分以上かかりますし、まだそうした環境でインターネットを利用しているユーザーが大部分です。 そんな環境でアルバム全体を何曲もダウンロードしようとすると大変です。
 Liquid Player6では新たにダウンロードマネージャーという機能が加わりました。複数のダウンロードの管理ができるようになっており、 Liquid AudioのDRMが付いている楽曲なら回線が切断されても途中から再開することが可能です。他のDRMでは残念ながら最初からやり直しになってしまうのですが。
 また、先ほどのサブスクリプションモデルの実現が重要です。インターネット上にクレジットカード情報を流すことに抵抗のある人は少なくありません。 そうした情報の入力回数はできる限り少なくする必要があります。さらにサブスクリプションモデルが実現できればISPのサービス料金に上乗せすることも可能になりますので、ビジネスの幅が非常に広がります。 ユーザーに対しては全体として音楽配信サービスが簡単なものになると期待しています
 
−アメリカでのLiquid Audioの状況はいかがでしょう? 先ほど18万曲の楽曲があると伺いましたが、メジャーレーベルとの契約もあるのですか?
 
Kevin Walker氏:  アメリカでは既にEMI、BMG、Warner、ZOMBAと契約しています。ブリトニースピアーズ、バックストリートボーイズ、レニークラヴィッツ、 カントリーミュージックではケニーロジャースなど有名な楽曲も揃っています。最近はそうしたメジャーレーベルからの楽曲が増えてきました。 ようやく半導体メモリにオーディオを記録するという事が大手のレーベルにも理解され始めたという印象です
 
−ワールドワイドではpressplayとMusicNetというメジャーレーベル自体のビジネスも立ち上がろうとしていますが影響はありますか?
 
Kevin Walker氏:  まず、それらはまだリリースだけで立ち上がっていないと言うことを指摘しておかなければなりません。
 また競合する部分もあるでしょうが、是非Liquid AudioのRIFFSを使ってくださいと言う立場ですね。 Liquid Audioは既にインフラが整っていて稼働している唯一のシステムなわけですから。マルチコーデックでマルチDRMですし、先ほど申し上げた通り、次のバージョンでは他のサーバに入っていても構いません。 Liquid独自の技術では特許も10くらいありますし、一緒にビジネスがしたいという立場です
 
−そうすると、あまり脅威に感じてはいないと言うことですか
 
Kevin Walker氏:  ええ、この数年間、同様のリリースはいくつもありました。ただ我々はまだ生き残っています。実際にe-tailerのサイトと接続して稼働しているという実績の方が重要だと考えています
 
−では、この後の日本での体制についてお伺いしたいのですが、Liquid Audioのリリースでは30日以内にリキッドオーディオジャパンからの移管を終えるとあったのですが
 
Kevin Walker氏:  ロゴやライセンス、技術などはその通りです。 ただし、社名については上場企業ですから日本の商法により株主総会の決定が必要ですので(2001年)9月12日の臨時株主総会を待つことになります
 
−これまでの顧客へのサポートはどうなるのでしょう
 
Kevin Walker氏:  その点に関しては、契約解除の合意によって顧客に不利益にならないように移管を完了することになっています。 新しい組織ができ、Liquid Audioが100%管理するシステムができるまで、システム自体はリキッドオーディオジャパンのままかもしれませんが、少なくとも顧客の配信サービスがストップすることはありません
 
−具体的に新しい組織の規模などはどのくらいになるのですか
 
Kevin Walker氏:  当初は5、6人の体制になるでしょう。セールスと技術サポートだけと考えています。 やはり日本でビジネスを続けて行くには日本語で取引先とコミュニケーションできる人間が必要です。またソフトウェアの日本語表示や日本語環境の検証なども必要です。 本当に少人数の組織になるでしょう。
 ネットワークやサーバメンテナンスはネット経由でアメリカの技術者でも対応できます。実際にホスティングセンターに行く必要のあるトラブル時に行って対応すれば良いだけです。
 ソフトウェアのユーザーサポートは現在もそうですが、アウトソーシングにします
 
−現在の日本の顧客の楽曲のホスティングは国内にあるのですか?
 
Kevin Walker氏:  はい、ほとんどのコンテンツホルダーはホスティング場所を国内に限定しています。アメリカのサーバにホスティングしても良ければすぐにでも移したいのですが...
 
−その国内に限定というのは意外ですが、法律的な問題があるのでしょうか
 
Kevin Walker氏:  いえ、今のところはないですね。ドイツやフランスはホスティングを国内に限るという文化があり、そうした影響があるのかもしれません。ただ今のところ法律的な理由はないようです。
 Liquid Audioではユーザーがどこの国からアクセスしているかを判別して、制限をかける特許技術を持っています。 それを使えば法律的な問題が出てきたときにもクリアできるのですが、まだ技術が若いこともあり100%でないことに対する不安もあります
 
−日本ではエンドユーザー向けも含めて通信料金などが急速に下がっていますから、コスト削減は急務ですね
 
Kevin Walker氏:  はい、今のところ最もコストの負担が大きいのはサーバのハウジングサービスです。とはいえ、安ければいいというものではなく、やはり建物の構造も含めたセキュリティなどがしっかりしていないといけませんから選択は大変です。
 また、Liquid Audioのライセンスや名称などはリキッドオーディオジャパンから引き揚げますが、リキッドオーディオジャパンが開発した決済システムやそのハードウェアまで引き継ぐかどうかなど、新しい組織として判断する部分はまだ多く残っています
 
−少人数体制になるということは、一旦積極的な営業活動を辞めることになりますか?
 
Kevin Walker氏:  それは方針の違いです。多くの営業人員を集めてコンテンツホルダーやe-tailerを回っても人員に見合うだけの実績が上がるような状況ではありません。
 また、今後はパートナーシップを強めていきたいと考えています。コンテンツ側にもe-tailer側にもパートナーとなってもらえる企業と一緒に営業を行っていくことで効率化を図ることができます
 
−見通しの方はいかがですか?
 
Kevin Walker氏:  幸い、これまでサービスを利用いただいていたお客様は、配信サービス自体を見直すところは別にして、ほとんど継続していただける見込みです。 また、新しい組織になったら一緒にやりたいという新規のお話しも多く頂いています
 
−ビジネスのイメージも大きく変わりそうですね
 
Kevin Walker氏:  我々は技術会社です。人手をかけて売っていく販売会社ではありません。その意味でも販売パートナーは重要です。
 新しい組織ではLiquid Audioの新しいサービスを積極的に展開していきますので、きっと良いパートナーシップが築いていけるものと考えています
 
−お伺いしているだけで大変だとは思いますが、新しいサービスに期待できる部分も多くありました。是非頑張ってください
 
Kevin Walker氏:  ありがとうございます。期待に応えられるよう頑張っていきたいと思います
 
−本日はお忙しいところありがとうございました
 
 
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