(写真:遠藤信久氏)
EMD.GR.JPの企業インタビュー企画の第1回はBtoBの音楽配信事業を進める株式会社リオポートドットコム。
同社代表取締役遠藤信久氏にお話を伺った。
 
−まず、会社の概要からお願いします
 
遠藤氏: 弊社は米国のダイアモンドマルチメディアのディビジョンとしてできたのが最初です。ご存知の通り、「Rio」というMP3プレーヤーを発売したのが1998年12月だったわけですが、この商品の企画段階からハードウェアだけでなく配信のビジネスまで手掛けていこうという考えがあり、1999年1月にリオポートというディビジョンができました。
 その後、本体のダイアモンドマルチメディア社がS3に買収されるといったこともあり、ひとつのメーカーの中にいることの資金的、ビジネス的な制約が出てきたため1999年10月に独立しました。独立に際してはいくつかのベンチャーキャピタルから出資を頂き、出資者のひとつMTViとは独占契約を結びました。
 日本法人については音楽CDの販売規模では世界で2番目に大きな市場を持っていることもあり、早い段階から準備を始め、2000年3月29日に設立しました。2000年12月29日時点で資本金も3億2090万円となり、向こう4年程度の運転資金を確保しています。
 
−現在の会社の規模を教えてください
 
遠藤氏: 全世界で130人程度の人員を擁しています。日本法人は現在5名で運営しています。
 
−それではビジネスの概要について教えてください
 
遠藤氏:  我々のビジネスには大きく2つの側面があります。
 ひとつ目は配信ビジネスです。当初はRioport.comという独自のサイトからの配信とBtoBという2本立てのビジネスを計画していましたが、現在はBtoBだけになっています。このBtoBというのは、e-tailerと呼ばれる販売サイトに対してインフラ提供、すなわちコンテンツを含めてワンストップで全てのサービスを提供し、またコンテンツ側にはe-tailerを含めての販売インフラを提供します。これを我々ではPulse One Media Serviceと呼んでいます。
 音楽配信サービスを提供したいというWebサイト向けにコンテンツ、当然エンコーディング、パッケージングを含めたシンジケーション、ブランド化されたショッピングカート、イーコマースの仕組み、カスタマーサービス、をセットにして我々から提供します。収益は構築時にかかるセットアップフィー、月々の維持にかかるメンテナンスフィー、そして売れた曲当たりの手数料に当たるレベニューシェアの3つから成り立っています。
 もう一つはPD(Portable Device)、携帯型のプレーヤーをこう呼んでいるのですが、そうしたデバイスとPCとのインターフェースをPDメーカーにライセンスするビジネスです。MDM、メディアデバイスマネージャーと呼んでいるインターフェースによって、そのPDが我々のサービスを利用できるようになります。
 
−そのMDMとはどういったものですか?
 
遠藤氏:  現在、PC上で音楽を扱うアプリケーションソフトにジュークボックスと呼ばれるジャンルがあると思いますが、これらがPDと楽曲データをやりとりする際のインターフェースです。
 現時点ではMusicMatch、RealJukebox、Rioport Audio Manager、EarJamPlayer、そしてWindows Media PlayerにはWMDMという形で採用されています。また、PD側ではサムスン、そのOEM、Rio500、600、800、コンパックのプレイヤーなどにライセンスしています。PCとPDの間の標準インターフェースと言えると思います。
 ハードウェア側にはファームウェアとして提供しています。製品のパッケージとしてソフトウェアを添付する場合は今あげたようなソフトウェアを使っていただければ結構です。また、自らのブランドのものを必要と言うことであれば、弊社のRioport Audio Managerをご要望に応じて手を加えてOEMさせていただきます
 
−そのMDMはWindows環境でのみ動作するものなのですか?
 
遠藤氏:  Macintosh版がリリースされていてCasady & GreeneのSoundJam MPに採用されています。ただ今後はPC上のアプリケーションからWeb上のアプリケーションにしようという方針です。
 現在Consumer Electronicsメーカーに対しては、CEエディションというサービスも展開しており、ドライバ開発からPDをサービスに結び付ける部分のサポート、また次世代のインターネットオーディオに関する設計のライセンスとインターフェースを提供しています。
 
−社名からはプレーヤーの「Rio」の関連会社と考えていましたが、お話を伺うとかなり印象が違いますね。その辺、社名の変更などは考えられていますか?
 
遠藤氏:  当初はそうした面もあったかと思いますが、最近ではASPとしての認識も高まってきましたので、今更変える必要はないかなあ、と考えています。
 ただドットコムはそのうち考えた方がいいかもしれませんね(笑)
 
−ビジネスの現状と今期の目標を教えてください
 
遠藤氏:  配信ビジネスはまだほとんど始まっていません。今の段階では短期的な目標も設定していません。
 ライセンスビジネスに関しては、現時点で供与先が韓国、日本、アメリカ含めて30社近くあります。日本法人からの供与は3社です。残念ながら名前を申し上げることはできません。こちらは年内に有力なメーカー5つは取りたいと考えています
 
−プレーヤーの世界ではメモリカードの規格が複数あってデバイスとインターフェース、配信技術の関連は結び付きが強いように思えますが、連携は可能なのでしょうか?
 
遠藤氏:  可能と考えています。
 ネットワークにつながる機器なのになぜメモリの形状にこだわらなければならないのでしょう。ユーザーの立場に立ってみれば、同じネットワークにつながっていながら同じようにサービスを受けられないのはナンセンスです。
 ユーザーの立場に立って、ネットワークにつながっている機器が同じように等しくサービスを受けられるようにするのが我々の仕事だと考えています。そうした機器が増えていけば、コンテンツ側にとってもメリットのあるサービスになるわけですね
 
−今後の配信ビジネス全体の方向性をどのように捉えられているでしょうか?
 
遠藤氏:  配信ビジネスは現状どこもうまくいっていないと認識しています。かたやNapsterのような無料サービスがあり、かといって権利を堅く守ろうとすると使い勝手が悪くなる。
 そうした中で今の形でのダウンロードビジネスは難しいと考えています。いわゆるBtoCというビジネスです。新たに会社を作り、新しい名前のサイトを構築し、広告宣伝費をかけて顧客がサイトにやってくるのを待ち、ダウンロードをしてもらい料金を貰うという形態ではなかなか収益を得ることは難しいでしょう。何よりも顧客を継続的にサイトに呼び寄せるコストが非常に高くつきます。
 そこで我々が考えているのがサブスクリプションモデルです
 
−携帯電話の販売形態のようなイメージでしょうか?
 
遠藤氏:  その通りです。衛星放送も同様ですね。月々の料金を払いながら、有力なコンテンツ、例えばマイク・タイソンの試合であればさらに料金を払って見たいという人がいるわけですね。
 音楽配信も同様で、必ずユーザーに対してリコメンドの楽曲を提示するようにして満足度も向上させなければなりません。単なる顧客を待つだけのモデルとは正反対と言ってもいいでしょう。
 我々ではこの定額のサブスクリプションモデルが主流になっていくのは間違いないと見ています。そのための仕組みを早期に立ち上げる必要があると考えています。
 また、今後のポイントはその配信先がPCかそうでないかに移っていき、我々は非PCが主流になると見ています。よく言われるブロードバンドと全ての機器のネットワーク化が数年後に必ずやってくる、そのときのために何をしなければならないのかと考えているわけです
 
−それは具体的にはオーディオ機器のネットワーク対応と言うことだと思うのですが、そうなると考えられている理由というのは先程のビジネスモデルがPCではやりにくいということですか?
 
遠藤氏:  いえ、単純にユーザー層が広がらないということです。高齢の方も含めてみんなが音楽を聞くのにパソコンの前に座るようになるということは考えにくいでしょう。やはり見た目は普通のオーディオ機器が電話線、に限りませんが、ネットワークに接続されるようになり聴きたい音楽が勝手に入っているようなものにならないと裾野は広がらないでしょう。逆にそうなった場合には既存のCDの市場を置き換えるような規模になってもおかしくありません
 
−それはどのくらいの時期と考えていますか?
 
遠藤氏:  2003、4年くらいには登場すると見ています
 
−その時期に向けて貴社の取り組みとしてMDM技術があるわけですか?
 
遠藤氏:  MDMはあくまでPCとPDのインターフェースであり、非PCに対してはMSM、メディアサービスマネージャーというサービスを用意しています
 
−そのMSMとはどういったものですか?
 
遠藤氏:  MSMは先ほどお話ししました、Web上のアプリケーションのことです。Javaアプリケーションになっており、サーバーからデバイスに対するデータの共有をサポートします。
 このサーバーはユーザーとユーザーの権利とユーザーの持っているデバイスとデバイスの権利を管理します。このサーバーにつながるデバイスを増やしていくのが我々の戦略です
 
−その開発は既にスタートしているのですか?
 
遠藤氏:  ええ、もちろん。
 ただ誤解のないように付け加えれば、ブロードバンド環境について短期的に考えれば当初の受け口はやはりPCです。それが非PCになったときでも対応できるようにしておこうというものです
 もちろん、機器ごとのゲートウェイやクライアントモジュールは機器ごとに異なりますから、PCから徐々に広げていくというイメージです
 
−それではMSMというのはPCから提供されるのですか?
 
遠藤氏:  ええ、その通りです
 
−お話を伺った限りでは、どんなメーカーの製品でもリオポートが管理するサーバーにつながるというのが最終目標でしょうか?
 
遠藤氏:  そうです。もしくはメーカー自身がサイトを持たずにニュートラルな音楽サービスサイトにつなげるという形になるでしょう。ここにはどこのデバイスでもつながるようにしたいと思ってます
 
−そのサービスサイトというのはどのようなイメージでしょうか?
 
遠藤氏:  Webサービスでもあるでしょうし、データ保管だけの場合もあるでしょう。
 そもそも全てのオーディオ機器に対して我々の技術だけを使って貰おうという話ではありません。その機器が採用する複数のサービスのひとつとしてわれわれの技術を採用して貰いたいということです
 
−排他的なものではないと言うことですね
 
遠藤氏:  その通りです。万一我々がサービスを停止しなければならなくなった場合、そういうことは当然ない方がいいのですが、困るのはデバイスメーカーですし、彼らもそうした選択はしないはずです。APIなどは本当に小さいものですから複数採用しておくことは難しくないはずです。ただ、複数採用した中でどこが優れているか、どこが一番先にサービスを開始できるかという面で我々は自信を持っています
 
−あらゆるオーディオデバイスとユーザーと楽曲とを管理するとなるとかなり規模の大きなイメージですね
 
遠藤氏:  そうです。今はヨーロッパでも準備をしているところです。
 権利を管理するサーバはアメリカにあっても問題ないと考えますが。大容量のファイルを扱うサーバはできるだけ近くにあった方が都合がいいので年内には日本にサーバを移したいと考えています。問題はサーバ側のコストですね。場所代も通信インフラコストも日本はまだまだ高いので
 
−そうした意味も含めて日米で音楽配信ビジネスに違いはありますか?
 
遠藤氏:  変わらないと思います。よく言われるのがメーカーとレーベルに関係ですが、関係ははあるように見えて必ずしもそうではありませんから、あまり違いはないように思えます。
 違いがあるとすればビジネスの進み方ですね。例えば音楽配信の分野でもASPと呼ばれる業者がいくつか出てきています。自社で技術を持っていなくともマイクロソフトなどの配信ビジネス用パッケージを組み合わせて運用することで配信をしたいユーザーに向けてサービスを提供しようというものです。アメリカでは一時数十社ありましたが、今ではほとんど無くなってしまいました。日本でも同じような流れになるでしょう
 
−単純に日本がインターネットの分野でアメリカに遅れているということでしょうか?
 
遠藤氏:  そうですね。アメリカでも当初はCDショップのサイトからダウンロードサービスが始まり、やがてe-tailerと呼ばれるサイトがサービスとして開始し始めました。日本ではようやくCDショップのサイトでサービスが始まったところです
 
−日本ではレコード会社自らの配信が始まり進んでいるような印象を受けることもありますが
 
遠藤氏:  それがアメリカに影響を与えることはないでしょう。そうしたサイトに顧客を呼ぶのは大変なことです。そもそもあらゆるBtoCサイトが顧客獲得のコストの高さに赤字から抜け出せないでいるわけです。既に顧客の集まっているサイトで自社の商品、サービスを販売して貰うというのが今後の流れです。これは変わらないでしょう
 
−最後にメッセージがあれば
 
遠藤氏:  是非、機器はサービスを付けて売りましょうというのがメーカーさんへの我々のメッセージです。仮に現在数万円の機器でも店頭で数千円で買えるのであれば売れるでしょう。差額は販売後のサービスで回収できるのです。
 多分、7月にはそうしたサブスクリプションモデルはお見せできると思います
 
−楽しみですね。本日はありがとうございました。
(写真:リオポートドットコム社内風景)
 
 
閉じる