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日立GST、容量1Tbit/平方インチが可能なHDDヘッド技術を開発

日立製作所と日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は、記録密度が1平方インチ当たり1テラビット級のハードディスク装置(HDD)の実現に向け、CPP(Current Perpendicular to Plane)-GMR(Giant Magneto-Resistive)方式の磁気ヘッド(CPP-GMRヘッド)の基本技術を開発したと発表した。

CPP-GMRヘッドは、磁気ヘッドを構成するGMR素子の膜面に対して垂直に電流を流し、微小な磁界信号を読み取る方式。微細化に適しているが、TMRヘッドに使用されているTMR素子と比べて、外部の磁界信号の変化に対して素子の抵抗が変化する度合い(磁気抵抗変化率)が小さいため、読み出される信号出力が小さく、実用化のためには、読み出される信号の出力を増大させることや、ノイズの抑止などによってS/N比を高めることが課題となっていた。

今回新たに開発したのは、CPP-GMRヘッド素子の膜材料に、再生信号の出力を従来比で3~4倍大きくできる「高電子スピン散乱材料」を用いるとともに、ノイズを抑制する技術。

高電子スピン散乱材料とは、加わる磁界の向きによって、物質を流れる電子の散乱の度合いが大きく異なる材料。この材料を採用することにより、従来のCPP-GMR膜に比べて、磁界に対する素子抵抗の変化、すなわち出力を3~4倍向上した。

ノイズ抑制には、絶縁膜中に直径数nm程度の金属の電導領域を新たに設け、これを、厚み方向(膜厚方向)に流れる電流の経路として利用する「電流狭窄ナノ構造膜」を開発。これにより、読み出される信号の出力を増大させることができるほか、電導領域のサイズや配置によって素子抵抗を約一桁変化させ、最適値に調整することが可能としている。

この結果、S/N比が大幅に向上し、再生トラック幅が30 nmと50 nmの磁気ヘッドにおいて、それぞれ30dB、40dBという、各クラス最高のS/N比が得られた。

この成果により、垂直磁気記録方式のHDDにおいて、現行製品の2.5~5倍に相当する、1平方インチ当たり500ギガビットから1テラビット級の面記録密度を実現する磁気ヘッドとして、CPP-GMR方式が有力であることを示しているとしている。

<コメント>
HDDの大容量化を進める技術の開発は常に継続しており、今回の発表も基本的にはそのひとつのブレイクスルーに当たる。とはいえ、製品に適用される時期は未定であるほか、日立GSTのHDD事業自体もポータブルプレーヤーに最適な小型サイズに決して強くないだけでなく、事業自体も継続を危ぶむ報道がなされるなど、決して希望的なものとは言えない。

関連リンク:日立製作所の発表リリース

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