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産総研、マグネシウム合金に多様な色彩を与える表面処理技術を開発

産業技術総合研究所(産総研)は、サステナブルマテリアル研究部門金属材料組織制御研究グループ 石崎 貴裕 研究員が薬品等を使用しない極めて簡便なプロセスで構造色を発現するマグネシウム合金の新しい表面処理技術を開発したと発表した。

マグネシウムは実用金属中で最軽量という特徴を活かして、ノートPCの筐体や自動車のインパネ等に使われてきたが、自動車等と同様の塗装処理工程が行われており、工程が複雑かつ高コストになるという問題点があった。

今回の研究結果は、タマムシの鞘翅(しょうし)が多層膜構造と凸凹構造によって発色するという機能に着目し、マグネシウム合金表面に微細な構造を形成することで、マグネシウム合金にデザイン性や耐食性を付与することを目指してきたもの。

本処理技術は、フッ素樹脂製の密閉容器内に超純水とマグネシウム合金(AZ31やAZ61等のアルミニウムと亜鉛を含む合金)を封入し、120 ℃の温度で所定時間(2.5時間~10時間)保持するというもの。これによりマイクロメートル以下のサイズの微細構造体からなる薄膜をマグネシウム合金表面に形成し、発色させる。

この微細構造体は基板表面に対して垂直な方向に成長したナノメートルスケールのシート状の構造で、シートの面方向の大きさは200~2000 nm、厚さが50~100 nm程度。処理時間や処理温度を制御することにより形成される微細構造体からなる薄膜の厚みが変化し合金表面の色彩は変化する。なお、この処理により形成される構造体は、マグネシウムと水との反応により生成した酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムからなる。

また、この表面処理は、水以外の溶媒や薬品類を一切使用しないため、廃液処理などの問題がなく、簡便、低コストで、環境に与える負荷も小さく、この処理を施したマグネシウム合金には不純物等が含まれないため、リサイクル時には不純物を除去する工程が不要で、リサイクルプロセスの省エネルギー化への期待もできるとしている。

<コメント>
携帯プレーヤーにも筐体にマグネシウム合金を使ったモデルはいくつかあったが、それに安く、安全に色彩加工ができるというのは非常に興味深い。最近のモデルであまり採用されていないのが加工の複雑さやそのコスト高にあったのだとすれば、この処理技術で再び携帯プレーヤーへの採用も期待できるかもしれない。

関連リンク:産業技術総合研究所の発表リリース

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