トップページ»技術情報»富士通研究所、高性能・小型化を可能とするワイヤレス給電の解析・設計技術を開発

富士通研究所、高性能・小型化を可能とするワイヤレス給電の解析・設計技術を開発

富士通研究所は、電源ケーブルを接続することなく給電することができる磁界共鳴方式のワイヤレス給電において、さまざまな大きさの複数のモバイル機器に適用できる送受電デバイス解析・設計技術を開発したと発表した。

ワイヤレス給電技術には、主な方式として電磁誘導方式と磁界共鳴方式があり、2006年に提案された磁界共鳴方式は、コイルとコンデンサを共振器として使い、送電と受電デバイスの間の磁界の共鳴によって電力を伝送するもので、数cmから数mの範囲で離れた位置での送受電が可能であり、複数の機器に対しても同時に給電できる。

ただ、磁界共鳴方式の送受電デバイスの設計時には、機器の大きさからコイルの大きさを決定し、それに最適となるようにコンデンサの容量を決定し、送電デバイスと受電デバイスのコイルの形状に依存する浮遊容量の影響や、機器の筐体やバッテリーなどによる電磁気が、送受電デバイス間の共鳴現象に複雑な影響を与えるため、それを解析し設計する時間がかかる。設計用に使われる一般的なハイスペックのパソコンを用いても、送受電デバイスの基本的な解析だけで約24時間もの時間が必要となり、小型にすればするほどより難解になる。

今回、開発した技術は以下の通り。

  1. コイルモデルを解析する電磁界シミュレーターとコンデンサモデルを含めて共鳴状態を解析する専用の回路シミュレーターを連成することで、異なる大きさのコイルを用いた複数の送受電デバイスを一度に正確かつ高速に解析する技術
  2. 給電効率を最大とする評価関数に基づいて、ねらった共鳴条件に対して正確な設計条件を自動的に求めることができる技術

上記の2つの技術を組み合わせた磁界共鳴設計シミュレーターにより、送受電デバイスをねらった共鳴条件に対して正確かつ短時間で設計することが可能になる。

開発した解析・設計技術を用いて小型で薄型の受電デバイスを設計し、ワイヤレス給電機能を内蔵した携帯電話を試作したところ、送電範囲内の自由な位置で給電できるにも関わらず、85%の高い給電効率を達成した。

今後は、開発した解析・設計技術を用いて、携帯電話などのモバイル機器におけるワイヤレス給電システムの研究・開発を行い、2012年の実用化を目指すとしている。また、今回開発した成果は、モバイル機器のみならずプリント板とLSI間の電力送電や電気自動車のような移動体への給電などに幅広く適用を検討していく予定。

<コメント>
このリリースでは具体的な応用事例として携帯電話を想定しているが、モバイルプレーヤーもワイヤレス給電の有望な応用事例となるだろう。すでに、データ転送にはTransferJetやWireless USBがあり、音声系もBlutoothなどがある。ワイヤレス給電と合わせて、完全にコネクタのないプレーヤーの実現も期待できるのではないか。

関連リンク:富士通研究所の発表リリース

【広告】

コメント&トラックバック

トラックバックURL:http://www.emd.gr.jp/2010/09/14/1291/trackback/